能勢・豊能まちづくり × 川西市黒川里山センター「一人ひとりが輝けるまちづくりを、ともに」

Teamのせとよ対談:川西市黒川里山センター センター長 藤田 美保 さん

Teamのせとよ…能勢・豊能まちづくりを応援してくださるお客さまは、当社と一緒に地域を元気にする仲間、チームとの思いを込めています。

一人ひとりが輝けるまちづくりを、ともに

株式会社能勢・豊能まちづくりは、2020年の設立から4年を迎えました。弊社を応援してくださる地域のみなさまとともに、今後より一層、能勢町・豊能町をはじめとする北摂地域の持続可能なまちづくりに向けて、邁進してまいります。
今回は、弊社代表の榎原友樹が、箕面市で「箕面こどもの森学園」を運営する認定NPO法人コクレオの森代表理事であり、川西市黒川里山センターセンター長としても活躍されている藤田美保さんをお招きし、両者の出会いから、それぞれの想いや取り組み、今後の展開について対談させていただきました。


【藤田 美保さんプロフィール】

川西市黒川里山センター センター長
認定NPO法人コクレオの森 代表理事

小学3年生の時に読んだ本「窓ぎわのトットちゃん」をきっかけに、自由な教育、自由な学校に憧れる。大学卒業後、小学校教諭を経て大学院に進学し、一般的な公教育とはちがう新しい学校づくりに取り組む。2004 年に法人として「わくわく子ども学校」(現:箕面こどもの森学園)を開校し、2009年に「箕面こどもの森学園」校長に就任。2022年に認定NPO法人コクレオの森代表理事に就任。2023年にコクレオの森が川西市黒川里山センターの指定管理者となり、同年からセンター長を務める。

▽認定NPO法人コクレオの森ホームページ
https://cokreono-mori.com/index.html


コクレオの森の取り組み

榎原:
藤田さんと最初にお会いしたのは、2021年に豊能町が開催した「トヨノノ応援会」(※1)のオンライン会議だったと思います。コクレオの森さんの取り組みは、それ以前から「面白いな」と注目していました。改めて、これまでの取り組みについて教えてください。
藤田
コクレオの森は、箕面市でオルタナティブスクール「箕面こどもの森学園」を運営しています。オルタナティブとは、「主流の方法に変わる新しいもの」という意味で、オルタナティブスクールは、公立でも私立でもない「新しい選択肢の学校」です。箕面こどもの森学園では、“子ども一人ひとりの個性を尊重し、民主的に生きる市民を育むこと”をめざしています。
学校運営を行う『こどもの森』のほか、大人のための学びの場『おとなの森』、子育て支援『こそだての森』、民主的な学校づくりや持続可能なまちづくりを支援する『ミライの森』の4つの取り組みを行っています。
様々な活動をしていますが、子どもの主体性を育む教育や対話の文化を広め、人と人、人と自然が調和するライフスタイルの普及や、信頼によって結ばれる社会創りにチャレンジしています。

△箕面こどもの森学園での集合写真

榎原:
そうして特徴のある学校づくりを続けてこられて、今では毎年入学を希望される方がたくさんいらっしゃるとお聞きしています。新しい学校を創ろうと思ったきっかけは何だったのですか?
藤田:
実は元々、教員は一番なりたくない職業だったんです。
榎原:
そうだったんですか!
藤田:
両親など身近に教員が多かったのですが、自分が教員になるイメージは全くなくて。それよりも、発展途上国の教育事情に興味を持ち、ストリートチルドレンのための教育プログラムを創りたいと、NGOを通じてバングラデシュに行きました。現地で骨を埋めるつもりで取り組んでいましたが、道半ばで、自分が考えている支援は本当にこの人たちのためになるのか、本当に自分がやりたいことなのかと、迷いが出てきたんです。その後結局、日本に戻ってきました。ただ子どもにかかわることが好きだったので、次の道を見つけるまでと、小学校の教員になりました。そこで、日本の学校教育に大きな違和感を感じたんです。何でも大人が主導権を握って決めてしまい、ベルトコンベアのように同じレールの上を進ませようとする。学校は人が人として生きるために大切な場所であるべきだと、強く感じました。このことがきっかけで、別の学校のかたちがあるんじゃないか、自分で創れたらいいかも、と思い出したのです。

榎原
その時のイメージは、今の「箕面こどもの森学園」のかたちと同じだったんですか?
藤田
その当時にタネができて、洗練され、花が咲いたという感じです。教員を退職して大学院へ進学したのち、育児をしていたのですが、「大阪に新しい学校を創る会」という団体が箕面市での学校設立に向けた講演会を行うという新聞記事に出会い、鳥肌が立ちました。当時箕面市に住んでいたこともあり、「これは這ってでも行かなければ!」と、運命的なものを感じたのを覚えています。その団体が、今のコクレオの森です。
榎原
点と点がつながるような感覚だったのでしょうね。これまでのお話で僕が感じるのは、藤田さんはいずれのターニングポイントにおいても、ご自身がどうありたいかということに深く向き合ってきておられますよね。「自分の気持ちを大切にする」ということを藤田さん自身が体現されているから、それがきっと子どもたちにも伝わっていると思います。

黒川里山センターでの取り組みからまちづくりへ

榎原
それからこうして長きにわたって学校運営を続けて来られている藤田さんですが、黒川里山センターの指定管理者となられたきっかけは何だったのですか?
藤田
私たちは小学校から始まったのですが、教育活動を続ける中で、もっと小さい年代から「あなたはあなたでいいんだよ」と伝えていくことが大切だと気が付きました。最初は箕面市で土曜日に親子クラスを始めたのですが、小さい頃は自然体験をさせたほうがいい、自然豊かな環境の中でこそ花開くという考え方になり、公園でなく里山で活動ができる場所を探し始めました。そんな時、たまたま「黒川公民館を使ってくれる人を探している」という人に出会い、この日本一と言われる素晴らしい里山の環境の中で活動を始めることができました。月1回からスタートし、だんだん増えて、今では平日に3回というペースで開催しています。私たちは次に2校目の学校の開校を目指しているのですが、次の学校はこうした里山の環境が残る場所で開きたいと思っていますので、ここでの実績は次へのステップにつながるとも思っています(※2)。私たちのスタートは子どもの教育ですが、これからの未来を創っていくという意味では、まちづくりと同じだと思っています。

△黒川里山センターでのマルシェの様子
△ちまき作りの様子

榎原
まちづくりとなると、子どもたちだけではなく、地域の大人など様々な人との関わりが出てきますね。
藤田
「あなたはあなたでいい、わたしはわたしでいい」と伝えてきたことが、対象が大人になるだけで、本質は同じだと思っています。子どもに教育したいというよりは、理想のまちづくりをしたいから、そのための学校を創りたいと思っていたことに気が付いたんです。学校を拠点として、社会課題を自分事として「何かやりたい」「運営したい」という人たちの取り組みを支援できればと考えています。
榎原:
私たちの会社も社名に「まちづくり」とついていて、エネルギーの地産地消を通じて地域の素敵な取り組みを応援したいと考えています。藤田さんとは、分野は違えど、大事にしたい方向性は似ているなと感じます。
藤田:
そうですね。エネルギーをはじめ、何でも、どこかの既製品ではなく、身近で手触り感のあるものを選びたいです。食べ物、医療、建築、そして教育も、誰かに決められるのではなく、自分の気に入るものを選びたいですね。
榎原
すごくよく分かります。地域には、全く違う得意技を持って輝いている人がたくさんいる。そこに社会課題を共有してみんなで一緒にやれると、そのプロセスがまちづくりになる。私自身も今、様々な取り組みで実体験していますが、楽しいし、お互いをリスペクトできますよね。私の会社の事業でも、ついついエネルギーを回すことにフォーカスしがちだけど、プロセスを大切にし、色んなことに尊厳を認めながら本質を大切にしていきたいですね。そうすれば、僕らもまたさらに面白いことができるかもしれないと感じました。

これからやっていきたいこと

榎原
黒川里山センターでは、改修工事が始まりましたね。
藤田
「旧黒川小学校再生プロジェクト」として、センターの南北棟(旧黒川小学校校舎)を、里山保全や子どもが自然をとふれあう体験などを行う拠点とするための耐震改修工事費用として、川西市主導でクラウドファンディングを募っていました。現在、クラウドファンディングは終了し、引き続き寄附を募っている状況ですが、6月から改修工事に入りました。工事は2024年度いっぱいまでかかる予定です。
榎原
我々も少しですが、電気代の収益の一部から寄付をさせていただきました。
藤田
本当にありがとうございました。川西市の担当課も喜んでおられました。
榎原:
こうして応援のちょっとした気持ちを、手紙を交換するような感じで贈りあえるのは嬉しいですね。

榎原
黒川里山センターの改修工事が終わったら、やってみたいことはありますか?
藤田
4月からリニューアルオープンの予定ですが、全国で取り組みが広がっている「シェア図書館」をやってみたいと考えています。「シェア図書館」とは、本棚の一区画を「一箱本棚オーナー」として、住民が月々定額の料金でレンタルし、自分が置きたい本を並べるというもの。本を通じて交流が生まれる、住民参加型の地域拠点と言えます。貸す人は、自分の本棚をメンテナンスするためにここへ来る。借りた人は、本を返すためにここへ来る。そんな仕組みで定期的に訪れてもらえる場所になればいいなと、着目したのです。そうして黒川へ訪れるうちに、自分のライフスタイルを見直すきっかけにしてもらえたら、嬉しいですね。
榎原
なるほど、「仕組みで人を呼ぶ」というアイデアは素晴らしいですね。私たちも参考にさせていただきたいと思います。

能勢・豊能まちづくりへの期待

榎原
もし良ければ藤田さんから、能勢・豊能まちづくりへエールをいただけませんか?
藤田
地域エネルギー会社の良いところは、電気の供給を通してみんなとつながれるということだと思います。電気はなくてはならないインフラですから、その強みを生かしてマインドチェンジを訴えていくことができるのではないでしょうか。どんな電気を使うかということは、社会を変える投票をすることと一緒だと思うので、高い・安いという価格だけで選ぶのではなく、「地域や環境に良い電気」を選ぶ人がもっと増えるように、使う人の意識を変えていくことができると思います。この黒川里山センターで使用する電気も、すぐに能勢・豊能まちづくりさんの電気に切り替えました。
榎原
ありがとうございました。こうして地域を想う気持ちをつなげて、「みんなでつながっているね」というコミュニティ感をもっと出していきたいですね。まだ僕たちのことを知らない人もたくさんいると思うので、素敵な取り組みをされている人たちを応援することで「ここも応援してあげてよ」とつながりが広がっていったり、支援を活用して「こんなこともやってみようか」と新しい取り組みがどんどん生まれたりしたら嬉しいです。そういう意味でのインフラになれたら、僕らとしては幸せですね。
藤田
能勢・豊能まちづくりさんは交通のワークショップなどもされていますよね。
榎原
はい、地域の方々と交通課題の解消に向けて話し合いを重ねてきました。今年度、観光振興も兼ねて電動のトゥクトゥク(※3)を導入し、例えば能勢電鉄妙見口駅から黒川や能勢の間などを走らせる予定にしています。ゆっくりと里山の風景を眺めながら移動することができるので、移動そのものを楽しんでいただけるようにできたらと思っています。黒川地域を走る時はこのセンターを拠点にして、周辺の観光を楽しんでいただけるようにしたいですね。その際はぜひ、お知恵を貸してください。
藤田
楽しみですね!ぜひよろしくお願いします。

(※1)トヨノノ応援会…2021年に豊能町が実施した、町民や地元企業発意の公益性の高いプロジェクトを支援する事業
(※2)2024年7月、猪名川町旧六瀬中学校跡地活用の優先交渉事業者に決定し、学校法人「あけぼの学園」と共に、兵庫県にて、私立の小中学校の設置を目指すことになった。
(※3)トゥクトゥク…タイなどの東南アジア諸国でよく見られる3輪タクシー。前部が運転席、後部が客席になっており、乗客を乗せるほか、荷物を運搬することができる。